小身の旗本の家に生まれ、四男坊で部屋住の冷飯食いだった峰近香四郎は、家督を継ぐや、わずか一年足らずで順調に出世を重ね、今や伝奏屋敷の諸大夫兼幕府評定所留役で一千石取りにまでなっていた。
しかも、公家の今出川家より正室を迎える大身に上り詰めたのだった。
が、栄達の喜びは失意へと変貌する。突然、町中で十手持ちに捕えられ、伝馬町牢屋敷に入れられたのである。
だれが、何の目的で私を?
苦悩する香四郎であったが、隣の房には思いもよらぬ人物が……。これを僥倖と考えた香四郎は生きる活力を得て、ふたたび出世への道を歩むことになるのだった。
果たしてひと騒動の果てに行き着いた香四郎の運命とは?今日も江戸っ子侍が葵紋入りの拝刀村正を閃かせる!