まさに青天の霹靂(へきれき)──。旗本家に生まれながら、冷飯くいであった峰近香四郎は、兄の急逝により御家を継嗣。お目見得となるや、筆頭老中・阿部正弘から長崎奉行支配の調役を拝命する。続けて南町奉行・遠山景元の懐刀となり、別格与力の任命を受けることになった。ところが、抜け荷の摘発で手柄を立てたはずの香四郎は、職を解かれ無役に……。失意の底にあった彼を訪ねてきたのは、また老中であった。授かっていた妖刀「村正」に代わり新たな太刀を拝領された香四郎。出世への道はまだ途絶えていなかったのだ。果たしてその御役とは──!? 十六葉の菊が刻印された大小を手にした江戸っ子侍が、時代の荒波に呑まれそうな国を救うため、大きな風に立ち向かう!