幕府による奢侈禁止は庶民の娯楽にまで及び、人々の心はさらに疲弊していった。
そんななか、町道場の師範代・坂木結衣は路上で白昼堂々と幕政を批判する。その神々しい姿に江戸の庶民は拍手喝采。天保の天女と称え、熱狂した。
それを絵師の歌川国芳が錦絵で風刺したことから、騒動はさらに拡大する。老中の水野忠邦は事態を重く受けとめ、腹心の南町奉行・鳥居耀蔵に結衣の捕縛を命じた。
だがそれが本意ではない耀蔵は、水野の命に背き苦肉の策を講じる。
一方、南町同心の倉田彦三郎は、思い人の結衣が神聖化され美しくなってゆく様を尻目に、悶々とした日々を送っていたのだが……。
痛快にして好評の長編娯楽時代小説。書下ろし第三弾!