江戸の巷を騒がす女盗賊あり──。絶世の美女と噂され、朝廷の命で能面ばかりを盗む〈猫御前〉。一方それを追うのは、北町奉行・遠山景元直下の隠密〈狐〉であった。実はこの二人、同心・影浦善朗と妻・おし乃として、互いの素性を知らない仲睦まじい夫婦だったが、敵同士であるはずの裏の世界でも、次第に惹かれ合う存在になっていた。が、そんな二人の元に、妹〈猫〉のお夕がやって来てから様相は一変。淫靡な術でお夕が影浦を誘惑したのだ。おしどり夫婦の危機、であった。そんな中、新たな厄介者が……!巫女姿の謎の女が現れたのである。果たしてこの美女の目的とは。朝廷と幕府の思惑が入り組む中、女房と女盗賊の“ふたりの女”に惚れた影浦は、重大な決意を固める──!!