紀州忍群による将軍世嗣・徳川家慶の暗殺を防いだ一色綾之丞。父の命は救ったが、一連の陰謀の裏で、密かに慕ったお蔦や盟友の飛鳥総十郎を喪った。その悲しみにくれる間もなく、総十郎と同じ隠密廻り同心・鯉渕孫七郎との新たな縁が生まれ、さる事件の探索へ出向く。その陰で、お家再興を目指す紀州忍びの棟梁らは、復讐の機会を窺っていた。ついに眼前に現れた闇の敵に立ち向かう綾之丞と孫七郎…。ところが綾之丞は直心影流の剣客として、あるまじき不覚をとってしまう。その時、絶体絶命の綾之丞の耳に、信じられない声が届く―。将軍家の血を引き、大身旗本の子として育った無頼剣客、最後の死闘。その熱き剣さばきを描く著者渾身の評判作、いよいよ大団円!