小石川の茶屋で菓子をつまみ、冷茶に頬を緩ませる一人の若者──着流しに羽織を粋に纏う、どこから見てもただの遊び人であったが、この羽織を裏返すと、大きな葵の御紋!そう、この男こそ、将軍・吉宗の四男で、次代将軍・家重の弟、腕白若殿の徳川宗尹であった。父や兄とは違う、自分なりの世直しを目指す宗尹は、松平小五郎を名乗り、市井の人と触れ合うことが政だと考えていた。だが彼らの不満を直に耳にすれば、必然、悪との対決となる。仇討ち、辻斬り、御家騒動……。脳天気だが義理人情に厚く、しかし、悪を憎む心は誰にも負けない若殿が、今日も江戸の町を騒がせる災難をぶった斬る!のちに一橋家の祖となる貴人は、無事に弱き民を助けることができるのか!!