江戸は小石川の養生所で、縁台に腰掛けて町人の子供相手に将棋を打つ只の遊び人……。だがこの男、実は現将軍・徳川吉宗の四男で、次将軍・家重の弟、そしてのちに一橋家の祖となる高貴人・徳川宗尹、その人であった。宗尹は、父や兄とは違う世直しを求め、松平小五郎を名乗り、城を抜け出していたのである。庶民と話し、その幸せや不満を身体で感じ、庶民を苦しめる悪を根絶するために、町に出ているのであった。そんな折、将棋相手の扇之介に魔の手が忍び寄る。奸計をめぐらすある藩の家老が刺客を放ってきたのだ。どうやらその出生に秘密があるようだが、小五郎は無事、扇之介を救出することができるのか!?何人も怖れおののく羽織の葵の御紋が、今日も江戸の町で乱舞する!