御側御用取次──わずか一万石の譜代大名ながら、将軍の補弼にまで上り詰めた田河意周。朝廷の武家伝奏が近づいて来るほどの大役であったが、海防問題や将軍継嗣問題など、幕閣を巻き添えにする難題の対応に迫られ、城詰となってしまう日々が続いていた。そんな多忙の折、正室・お蘭が第一子を出産した。世継ぎとなる男の子ではなく姫君であったが、市と名付けられたこの幼子をめぐり、意周にある思案が浮かぶ。そして、下した決断──。将軍・徳川家慶、岳父・水戸斉昭、筆頭老中・阿部正弘らがその忠義を讃えたことで、意周は新たな局面を迎えることになる! 家臣や領民のため、野心を抱いて栄達を望んだ一大名の、数奇な運命を描く好評シリーズ、第四弾!!