一生を冷や飯くいの居候と信じ、町人なみの生活を送っていた田河意周は、突如、藩主である長兄と世子が病死して、遠州多々良藩の当主となった幸運者であった。だが石高はわずか一万石……。そのための苦労と悲哀は数えきれないほどあった。大事な領民と藩士のため、立身出世する!まぎれもない大層な野心を抱く極小大名であった。水戸家・徳川斉昭の娘を娶り、奏者番の要職を賜るなど、順調に出世
道を歩む意周はある日、江戸城大奥の使いに呼ばれる。大奥への口出しが多い岳父・斉昭の懐柔を懇願されたのだ。大奥との結びつきは、出世の大きな足掛かりになる──。意周と斉昭は、これをきっかけに驚くべき策略を思いつく!知られざる大名生活の情景を描く、好評第三弾!!