徳川幕府二百六十年の歴史の中で、幕閣の最高責任者、老中と呼ばれる人たちはおよそ百五十人を数える。その中でも、民の意見に真摯に耳を傾け、民と触れ合い、民と同じ目線に立って政を行った遠山備前守清流は、格別な人情家として知られ、特異な存在であった。徒目付の伊佐健吾と風吹蓮三郎を腹心として、江戸の平穏を守っていた。だが、その安らぎが破られる折もある。立て続けに無宿者が斬られる事件が起こったのだ。すぐさま捜索に入る健吾と蓮三郎。迷いのない鋭い刀傷から、ただの辻斬りではない、という報告を受けた遠山備前。その脳裏には、一人の浪人の面影が浮かんでいた……。現代では総理大臣に匹敵する筆頭老中、その快刀乱麻の活躍を描く、待望の第二巻!