日本橋の煮売り屋の縁台に腰を掛け、岡っ引きの報告に耳を傾けるひとりの同心──。見るから一介の町方だが、弓座右京を名乗るこの男、実は上総国美山藩七万五千石、十二代藩主という大身であった!かつて右京は、町方同心が支配違いで寺社地に立ち入れず、下手人を取り逃がす場面を目撃し、その不条理を正そうと北町奉行に頼み込んで、自ら同心となったのである。かくして、捜索の届け出不要、どこにでも立ち入り自由という特権を与えられた別儀同心が誕生したのだった。そんな右京の前に、厄介な敵が現れた。腕っ節の強い山伏と、その裏に見え隠れする目付という権力者の影。しかも彼奴らの真の狙いはとんでもない人物の命だと判明して……。好評痛快シリーズ、第三弾!