高知を舞台に、芸妓として女としての意地と哀歓を描いた2作品を収録。
付録では、遊廓の歴史や知られざる実像を特集!
高知で花開いた妓楼文化を書き残しておきたい――。宮尾のそんな思いから生まれた作品が『陽暉楼』だ。土佐随一の料亭と謳われた陽暉楼を舞台に、芸妓たちの生きざまや土佐の情景を織り込みながら、実存の名妓・桃若(ももわか)の薄幸な生涯を流麗な筆致で綴る。ひとりの男を愛したことで、過酷な運命を歩むことになる桃若の潔さ、心根が涙を誘う傑作だ。
『寒椿』は、置屋に預けられ姉妹のように育った4人の少女が芸妓となり、その後に歩んだ人生の明暗を4章からなるオムニバス形式で描いていく。貧しさ故に身売りされた女たちを雪に埋もれて咲く寒椿に喩えた、宮尾の思いがこもった作品である。
付録は、遊廓社会を研究テーマのひとつとする大阪市立大学・佐賀朝教授に遊廓の誕生から消滅に至るまでの歴史、花街あるいは花柳界ともいわれる遊廓社会の実像などを訊く。
※この作品にはカラー写真が含まれます。