乱歩賞を創設、『宝石』編集長として新人の育成に努め、海外ミステリーの紹介にも尽力。「大乱歩」獅子奮迅の250本。
欧米探偵小説の紹介と各国探偵作家クラブへのアプローチ、海外探偵作家との交流、トピックの紹介。探偵小説界の牽引役として、また象徴として多忙を極めた乱歩の57歳(昭和26年)~63歳(昭和32年)までの7年間の随筆と評論を発表順に並べてお届けする。
お馴染みの作家論、トリック分類などのほか、いわゆる「文化人」として新聞や雑誌に寄せた小さなコラムや随筆、アンケートの回答も収録。テーマは多岐に渡り、それぞれが昭和という時代を写し、その世相を浮かび上がらせる。
また、後段の『宝石』編集後記では、当時売れ行きが芳しくなかった同誌の編集長を引き受けて奮闘する乱歩の姿が垣間見られる。この時乱歩は私財を投じ(のちに返還された。)、持てる人脈とツテのすべてを使って『宝石』の再生を試みているのだ。
そうして実現したのが、今回特典として収録する対談・座談会などの企画である。中でも、幸田文が小気味良い語り口で繰り出す父・露伴との思い出話(「幸田露伴と探偵小説」)が楽しい。露伴が『新青年』をわざわざ買ってきて一家で読んでいたというエピソード、小栗虫太郎が好きだったという意外な話も披露され、温かな余韻を残す。
今回特別掲載として、高木彬光が『別冊宝石』(江戸川乱歩還暦記念号)に寄せた「小説江戸川乱歩」を収録。乱歩から高木に受け継がれたものを通して、乱歩作品の魅力を読み解く小松教授の解説にもご注目いただきたい。