平勝之進は、吉住藩江戸藩邸に生まれ育った十八歳。役職は書院番で、今は藩主在府のため、殿や屋敷の警護を務めている。この年にして無垢の勝之進には、このごろ気になる女がいた。女の名は仄香。賄い方で町方の出だが、何とか嫁に出来ないかと思い悩んでいたのだ。ある日、勝之進は井戸端にあった仄香の洗濯物に顔を埋めたことから、不思議な力を得るようになる。実は仄香はあやかしで、仄香の女の匂いを嗅いだ勝之進は無敵の力と淫気を宿してしまったのだ。仄香との情交によってさらに力を増した勝之進。その実力を買われた彼に新たな命が下る。それは盗賊が横行する千住中屋敷の警護。だが、その盗賊たちの背後には魍魎に操られ、幕府転覆を企む人物が…。