料理屋志乃井に居候するとぼけた浪人、葵鯉之介。用心棒などと称し、日々をのんべんだらりと暮らしているが、実はこの男、水戸徳川家の若さまであり、しかも十一代将軍・家斉の実子。かの水戸光圀公の再来とまでささやかれる、まこと高貴な武士なのである。くだらぬお世継ぎ騒動に巻き込まれ、ぷいっと家を出てしまった鯉之介は、自由気ままな浪人生活を楽しみながらも、市井に巻き起こるさまざまな事件、厄介ごとに首を突っ込んでいく。とはいえこの鯉之介、徳川の若さまとして育ち、文武両道ながらも、市井の世情にはとんと疎い。周囲の人間は、鯉之介の無知や目にもとまらぬ剣さばきに、目を白黒させるばかりなのだが……。