船宿に居候する謎の浪人、幸四郎。どこかとぼけた風貌とは裏腹に、剣をとれば天下無双の遣い手。しかも、岡っ引きの貫太郎が持ち込む難事件を、奇想天外な策で次々に解決していく、風変わりなお侍であった。しかしてこの幸四郎、実はある藩の大名……武家暮らしに嫌気がさし市井に降りた、本物のお殿さまだったのである。ある日のこと、浅草の奥山をぶらぶらしていた幸四郎は、ひょんなことから得体の知れぬ浪人と出会う。凡太郎と名乗るこの男、勝負をして幸四郎が勝てば、なんと己を差し出すというのだが……。奇っ怪な浪人の謎、事件の鍵を握るまぼろしの女、母を亡くした子どもの不思議な能力……。