「俺に名はない。野良犬だ」──黒紋付に黒の袴という黒ずくめの出で立ち、腰に一口の豪剣、同田貫を帯びていたのは、五尺七寸はあろうかという長身の浪人であった。同道するでもなく、若侍の七郎太、僧侶の抜山と、行く宛てもない旅を続けていたが、嘯く口癖の通り、この浪人の素姓や名を知る者は誰もいなかったのである。無頼で人との関わりを避けているように見える浪人であるが、道義に反する者を許せず、その行く先々で用心棒と化し、豪剣を振るっていた。そして京の町で武家同士の斬り合いに遭遇。浪人は事件の原因がとある藩士と高級旗本の諍いにあることを知る。果たしてその遺恨の果てに、浪人が見たものとは──!? 異色の用心棒シリーズ、好評第二弾!