惹句入りで連載時のまま読むか、漢字でスラスラ読むか。
1つの作品を2つのヴァージョンで。読んで比べる少年探偵団。
「つぎつぎとおこる奇怪な事件! 黄金豹とは、そもそもなにもの?」(「黄金豹」)、「真夜中にろうかを歩く美しい人形――。またまたおこる怪事件!」(「魔法人形」)。あおり文句もそのままに、連載時のかたちを再現してお届けする少年探偵団シリーズ。昭和の図書館には必ずあったポプラ社のあの本をあえて漢字化し、大人が違和感なく読めるようにしたヴァージョンも併録。戦後の少年誌の雰囲気を味わいたい人にも、奇想天外な読みものとして楽しみたい人にもおすすめの、大人のためのジュヴナイルである。
よく知られているように、乱歩は単行本にする際、自身で作品に手を入れ、時代に合うよう修正していた。今回収録した作品でも、連載時とポプラ社版では異なる部分がかなりあり、細かいものも合わせると、変更は優に100を超える。そのうち特に重要なところや興味深い部分には、註釈を加えたり、対応する箇所をリンクで結んで確認できるようにしている。乱歩のあとを辿り、資料的な探求を試みるのもまた、大人ならではの楽しみ方であろう。
収録作品は、「海底の魔術師」「探偵少年」など全7作。
大人になってはじめてわかる「子どもの知らない子どもの世界」が、きっとある。
他に付録として、『小学六年生』(小学館)に掲載された乱歩「天空の魔人」の翻案(「天空魔人」)を誌面まるごと再録。小松史生子・金城学院大学教授による、乱歩ジュヴナイルの根底にある根源的な恐怖とその対象についての考察も、ぜひ。