少年の日のドキドキとワクワクをもう一度。
惹句(じゃっく)入りで連載時のまま読む少年探偵団。懐かしのポプラ社版も漢字化して併収。
戦後初の本格的な創作である「青銅の魔人」をはじめ、昭和24年から29年までに少年誌に連載されたジュブヴナイル6作品を当時のままお届けする。各回冒頭の前号までのあらすじや末尾の惹句はもちろん、単行本や文庫本では削除・変更された部分も読めるファン待望の構成だ。加えて、昭和の学校図書館には必ずあった懐かしのポプラ社版も、漢字表記に直し特典として収録。さらに、電子書籍の特性を生かして、変更されている部分をそれぞれリンクで結び、比較できるようにした。几帳面な乱歩は、単行本にする際に自身で手を入れ、また、版を重ねる度に時代に合うよう微調整を繰り返したという。ちょっとした言い回しや言葉の選び方1つにも、そんな乱歩の作家としてのセンスとこだわりが現れている。どこがどう変わっているのか、乱歩の気分で探ってみてはいかがだろうか。
また、今回の作品には、連載当時の社会や世相が色濃く反映されたものも少なくない。例えば「青銅の魔人」では、戦災孤児を集めたチンピラ別働隊が結成され、「宇宙怪人」では、その頃から目撃談が増え始めた空飛ぶ円盤が登場。少年たちの、そして日本人の昭和史として読むのも、大人ならではの楽しみである。
小松史生子・金城学院大学教授の解説は、チンピラ別働隊に注目。少年探偵団の下部組織としての彼等のあり方から、児童文学の空白領域に切り込む。他に、小学館の学習雑誌に掲載された乱歩作品のダイジェスト版も当時のまま再録した。