黒羽二重を端正に着こなした侍が、深川の居酒屋で馴染み客に囲まれて談笑している。この男、店の居候で名を徳田宗之助という。尾張藩の下級藩士の次男坊などと恍けているが、藩の重臣や姫も訪ねてくる、理由ありの侍であった。それもそのはず、彼こそ上屋敷を抜け出した、尾張家九代藩主にして従二位大納言・徳川宗睦、その人であったのだ。ある日、太閤秀吉にまつわる千成瓢箪が、料理人・吉蔵を通して手に入った。しかもこの瓢箪、豊臣埋蔵金の在り処が描かれていると睨んだ奸計が強奪を狙っているという。そんな折、太閤の亡霊が現れ、尾張藩主に瓢箪の無事とある願いを告げる。宗睦は天下人の重宝を守り通せるのか!? 次期将軍候補の殿が町で奔走する人気シリーズ、第五弾!