夢の儚さも、人の心の邪悪な影も、欲望の罪深い悦びも、知ってしまった今こそ読み返したい。大人のための、とっておきの乱歩。
圧倒的な筆力で描き出された総天然色の一大スペクタクル・ロマン「パノラマ島奇談」、乱歩作品のイメージを決定付けた「孤島の鬼」、禁断のエロスと巧みな仕掛けで傑作の誉れ高い「陰獣」など、昭和の初めに書かれた読み応え十分な長篇を軸にお届けする。発表時から既に伏せ字だらけであったという、あの永遠の問題作「芋虫」をはじめ、珠玉の短篇も加えた充実のラインナップで大人のための乱歩ワールドをお楽しみいただきたい。
同時に、耽綺社名義で発表された「飛機睥睨(空中紳士)」や、乱歩の才能をいち早く見出した小酒井不木と共に練り上げた「屍を」といった、この時期に描かれた合作も収録。また、小品ながらファンの多い「押絵と旅する男」については、本作を愛してやまない立教大学大衆文化研究センター学術調査員・落合教幸氏がその魅力と奥深さをレクチャーする。さらに、乱歩作品を創作落語にした柳家喬太郎と三遊亭白鳥のスペシャル対談も収録。古典・創作、自由自在の人気落語家二人が語る、乱歩作品と創作落語の秘密は、濃く深く、まさに大人が唸る芸談となっている。
第6巻は、己の欲望と業に対峙し、それを楽しむ大人のための一冊である。
付録:インタビュー、コラム&フォト他
※この作品は一部カラー写真が含まれます。