自殺をくり返して世界を救う少年。再び。
駆けつけた僕が見たのは、あまりにも異様な光景だった。真夜中の闇の中で、その一角だけがやけに明るい。赤黒い炎に包まれ、窓という窓から黒煙を吐き出す洋館。燃えている。崩れ始める外壁。熱風と火花が僕の位置にまでやってくる。「殺人も、放火も、全部……全部、あの女が……あの夢乃の奴がっ!」芝生に蹲った一人の女性がポツリと呟いた。ユメノ。トキワユメノ。僕はその人物を知っている。「超能力研究会」副会長で、この世で唯一の、たった一人の、僕の「能力」の理解者……彼女はいまもこの屋敷の中にいるのだろうか。その時、「拳銃自殺……」という、警官らしき男の声。そこは洋館の庭の端に設置された倉のような建物の中だった。かび臭いその部屋で……常盤夢乃先輩が倒れていた。清楚可憐な白いカーディガンが、何かに汚されている。どす黒い何かが、彼女のこめかみからだくだくと流れている。力なく落とされた左手には銀色の小型拳銃。人差し指はその引き金にかけられたまま……。僕はその光景をぼんやりと数秒間眺め、そして――彼女の小銃を握り、衝動的に、死ぬことを決意する。
「セーブ&ロード」機能を持つ自殺常習少年の推理ロマン第二弾!
※この作品は底本と同じクオリティのカラーイラスト、モノクロの挿絵イラストが収録されています。