その夏、彼女は記憶を失った――。
夏休み。桜間さんが事故で記憶を失った。
桜間さんといえば、完全無欠の「正義の人」にして、クラスの誰もが認める超美人。そしてなんの間違いか、僕、峰康の“カノジョ”でもある――。そんな桜間さんが、記憶喪失。
ゴシップに飢えた高校生たちにとっては、格好のエサだ。安いメロドラマを求めて僕にまで群がってくるやつらに愛想笑いを返しながら、僕はお見舞いにも行かなかった。行けなかった。好奇の目から逃げるように桜間さんを避けまくっていた僕は、2学期早々、彼女と気まずい再会を果たす。彼女は僕のことも完全に忘れていたわけだけど――「あなたは、私が一番嫌いなタイプの人間だと思います」――うん、まあ、全力で嫌われました。僕としてはそれでよかったのだけど、何故かとんでもなくお節介な先生のはからいで、僕は風紀委員である彼女の補佐を拝命することになってしまう。数少ない友だちの水井や、桜間さんの友人・宮井さんにも後押しされながら、僕らはもう一度、一から関係を築いていこうとするが――。小学館ライトノベル大賞にて優秀賞を受賞、ゼロどころかマイナスからはじまる等身大青春グラフィティ!
※この作品は底本と同じクオリティのカラーイラスト、モノクロの挿絵イラストが収録されています。