世界史的な視野で蝦夷の蜂起を描く超大作
国後を暗い影が覆った。長く患っていた惣長人サンキチが、ついに幽境に旅立ったのだ。和人からもらった薬を飲んだ直後の死だっただけに、毒殺の噂がまことしやかに囁かれ始める。――惣長人は和人に殺された。主戦派の若き長人ミントレを先頭に、和人との戦いを叫ぶ声が一気に高まるなか、鉄砲がなければ和人と戦うべきではないとする脇長人ツキノエの主張は次第に掻き消されがちになっていく。サンキチの歳の離れた弟で、妻とお腹の子も和人に殺されたマメキリ、さらにはツキノエの息子セツハヤフまでもが主戦論へと傾き、彼ら若い世代の長人たちによって、ツキノエの惣長人への就任は見送られることになった。ロシアからの鉄砲300挺はまだ届かない……。その頃、かの地で鉄砲の調達に奔走していたマホウスキは、頼みの後ろ盾を失ったばかりか、自らも皇帝特別官房秘密局に捕らえられ獄中に繋がれてしまっていたのだ。一方、国後ではある男の暗躍が続いていた。アイヌの和人に対する怒りを煽り、蜂起を促そうとする男の狙いとは? そして彼を動かしている人物とは? そんななか、若き長人たちはツキノエを択捉へ赴かせ、その間に事を起こそうと動き始める。