認知科学で見る、人間の知性推し活、二次創作、2・5次元、モノマネ、応援上映、ぬい撮り……漫画やアニメの登場人物に感情移入し、二次元の絵や映像に実在を感じる。はたまた実際に出会い触れることはほとんどないアイドルやアーティストの存在に大きな生きる意味を見出す。これらの「推す」という行為は、認知科学では「プロジェクション・サイエンス」と呼ばれる最新の概念で説明ができる。「いま、そこにない」ものに思いを馳せること、そしてそれを他者とも共有できることは人間ならではの「知性」なのだ。本書では、「推し」をめぐるさまざまな行動を端緒として、「プロジェクション」というこころの働きを紐解く。はじめに第一章 ♯「推し」で学ぶプロジェクション ―応援―第二章 プロジェクションを共有するコミュニティの快楽 ―生成―第三章 「推し」との相互作用が生まれるとき ―育成―第四章 ヒトの知性とプロジェクション ―未来―第五章 とびだす心、ひろがる身体 ―拡張―第六章 プロジェクションが認識世界を豊かにする ―救済―(本文より)「推し」に救われたという経験は、「推し」が自分に直接なにかしてくれたということではありません。「推し」によって自分がなにかに気づいたり、自分がなにかできるようになったり、自分をとりまく世界のとらえ方が変わったということなのでしょう。 あらためて考えてみると、このような自分のありようとこころの変化は、本書のテーマである「プロジェクション」がもたらす事象そのものです。はじめて聞いたという人が多いと思いますが「プロジェクション」とは、こころの働きのひとつで、認知科学から提唱された最新の概念です。