吉川英治の長編の歴史小説。若き日の豊臣秀吉。貧しい家に生まれ、その容貌から「猿」と蔑まれた秀吉が己の才覚だけを武器に出世を重ね戦乱の世にはばたく。現代の処世術にも通じるピンチをチャンスに変える考え方とは。ひたすら母のため家族のためにと思い、働く姿は日本人そのもの。十巻は信長の遺子信雄との戦。秀吉は、戦は最後の手段なりとしていた。外交こそ戦であるという信条なのである。故主信長の弔い合戦という名分をかかげ、山崎の一戦に光秀を討ったとき以外はみなそうだった。常に、軍力あっての外交なのだ。軍威軍容を万全にそなえてからいつもものをいうのである。背後に控えるのは徳川家康。果たして秀吉はどうするのか。