吉川英治の大長編の歴史小説、第十三巻、完結。ますます深まる南北朝の溝。先の見えない戦いに尊氏の苦悩は続く。幕府側の内紛も顕在化し、高ノ師直と直義との対立からついには尊氏と直義との戦にまで発展する。依然南朝方の勢力は強かったが、とうとう尊氏が病に倒れる。日本中を巻き込む戦乱は何だったのか。歴代随一の激しい気性の後醍醐と尊氏が同時代に現れ、しかも相反する理想を押し通そうとした宿命の大乱。歴史の行き詰まりはどうしても火を噴いて社会を変えねばならなかったのか。しかし人間の叡智は庶民に芽吹いていると「桐蔭軒無言録」は語る。