イスラエルと聞いて、あなたは何を思い浮かべるだろうか。驚くなかれ、「イスラエルという国家は、本質的にサイエンス・フィクションの国」(「イスラエルSFの歴史について」)なのだ。豊穣なるイスラエルSFの世界へようこそ。エルサレムを死神が闊歩(かっぽ)したり(「エルサレムの死神」)、進化した巨大ネズミに大学生とぽんこつロボットが挑んだり(「シュテルン=ゲルラッハのネズミ)、テルアビブではUFOが降りてきてロバが話し出すこともある(「ろくでもない秋」)。あなたは、天の光が消えた空を見つめる少年(「星々の狩人」)や悩めるテレパス(「完璧な娘」)とも出逢うだろう。アレキサンドリア図書館(「アレキサンドリアを焼く」)に足を踏み入れ、無慈悲な神によって支配されている世界を覗くだろう(「信心者たち」)。未知なる星々のまばゆいばかりの輝きをあなたは目にする。その光はあなたの心を捉えて放さないはずだ――。ロバート・シルヴァーバーグによる序文、編者によるイスラエルSFの歴史をも含む、知られざるイスラエルSFの世界を一望の中に収める傑作集。【収録内容一覧】まえがき ロバート・シルヴァーバーグ「オレンジ畑の香り」(“The Smell of Orange Groves”)ラヴィ・ティドハー/小川隆 訳「スロー族」(“The Slows”)ガイル・ハエヴェン/山田順子 訳「アレキサンドリアを焼く」(“Burn Alexandria”)ケレン・ランズマン/山田順子 訳「完璧な娘」(“The Perfect Girl”)ガイ・ハソン/中村融 訳「星々の狩人」(“Hunter of Star”)ナヴァ・セメル/市田泉 訳「信心者たち」(“The Believers”)ニル・ヤニヴ/山岸真 訳「可能性世界」(“Possibilities”)エヤル・テレル/山岸真 訳「鏡」(“In the Mirror”)ロテム・バルヒン/安野玲 訳「シュテルン=ゲルラッハのネズミ」(“The Stern-Gerlach Mice”)モルデハイ・サソン/中村融 訳「夜の似合う場所」(“A Good Place for the Night”)サヴィヨン・リーブレヒト/安野玲 訳「エルサレムの死神」(“Death in Jerusalem”)エレナ・ゴメル/市田泉 訳「白いカーテン」(“White Curtain”)ペサハ(パヴェル)・エマヌエル/山岸 真 訳「男の夢」(“A Man’s Dream”)ヤエル・フルマン/市田泉 訳「二分早く」(“Two Minutes Too Early”)グル・ショムロン/山岸真 訳「ろくでもない秋」(“My Crappy Autumn”)ニタイ・ペレツ/植草昌実 訳「立ち去らなくては」(“They Had to Move”)シモン・アダフ/植草昌実 訳イスラエルSFの歴史 シェルドン・テイテルバウム&エマヌエル・ロテム