監禁されたふたり。拳銃は一挺。銃弾は一発。相手を殺せば解放してあげる。――さあ、どっちが殺す?恋人、同僚……ふたり組を狙った連続監禁事件が発生。ヒッチハイクをした大学生のカップルは、深い飛び込みプールの底で意識を取り戻す。脱出は不可能だ。そのときふたりのそばに置かれていた携帯が鳴り、犯人が告げる。「銃がある。それには弾が一発入ってる。恋人かおまえ自身のための。それがおまえたちの自由の代償だ。生きるためには殺さなくてはならない」ふたりは銃を見る。恋人を殺す? ありえない。きっと誰かが助けにきてくれる――。しかし、誰も来ない。食料はない。水もない。飢えと渇きと寒さが襲う。体力が減る。会話も減る。銃を見る回数が増える。ここから抜け出したい。日常に帰りたい。でも恋人を殺すことなんてできない。本当に? 本当に相手もそう思っている……?恋人を殺したという大学生を事情聴取した、サウサンプトン中央署のヘレン・グレース警部補は捜査を開始するが、これは始まりに過ぎなかった。この後も同様の事件が次々に発生。ふたり組が監禁され、弾が一発入った拳銃を与えられ、究極の選択を迫られる――。ヘレンは次第にこの事件の異様さに気づく。被害者たちに共通点は見当たらないし、彼らを拉致したのはひとりの女らしいが目的がわからない。極限状態の密室で、やさしさが、愛が、プライドが崩壊し、欲望が、憎しみが、狂気が増殖していく。日本初登場作家がえぐり出す完璧な惨劇。