著書曰く、本書はありとあらゆる怪異を「雑煮のごとく放り込んだ」救いなき一冊である。目次には、それこそ市のように、極彩色の恐怖が尋常ならざるオーラを放ちながら犇いている。誰かに読まれることを希求し、熱く揺らめきながら並んでいる。そのどれもがおぞましく、ひとたび頁を繰ったならば、ただでは済まされぬ毒気を孕んでいる。それだのに、我々の指は止まらずに禁断の扉を押し開けてしまうのだ……。それが人間の業であり、すべての怪異の大本でもあるように思う。恋も恨みも一線を越えれば鬼となる。理性と良心はいともたやすく侵蝕され、暗い欲望に身を任せる悪鬼となってしまうのだ。実話怪談を読むこと――それは体験者の生涯に素手で触れるようなものだ。その業に、鬼に、触れる……どうか覚悟を持って読んでいただきたい。