あらすじ一九五四年十月三十日の夜。一人の中国人女性が羽田空港に降り立った。当時の日本にとって、数万人の残留邦人の引き揚げは急務。一方、建国したばかりの中国は、西側諸国との関係を築くための突破口を探していた。まだ日中に国交がない時代、綱渡りの外交の主人公を務めたのが女傑、李徳全だった。その滞在中の言動は行く先々で熱狂と波紋を呼び、両国間に奇跡が――戦後史の中に埋もれていた秘話を丹念に掘り起こす。