公演直前に姿を消したダンサー。美しき画家の弟。代役として主役「カイン」に選ばれたルームメイト。嫉妬、野心、罠──誰も予想できない衝撃の結末。芦沢央が放つ、脳天を直撃する傑作長編ミステリー!男の名はカイン。旧約聖書において、弟のアベルを殺害し、「人類最初の殺人者」として描かれる男──。「世界の誉田(ホンダ)」と崇められるカリスマ芸術監督が率いるダンスカンパニー。その新作公演「カイン」の初日直前に、主役の藤谷誠が突然失踪した。すべてを舞台に捧げ、壮絶な指導に耐えてきた男にいったい何が起こったのか?誠には、美しい容姿を持つ画家の弟・豪がいた。そして、誠のルームメイト、和馬は代役として主役カインに抜擢されるが……。芸術の神に魅入られた人間と、なぶられ続けた魂の叫び。答えのない世界でもがく孤独な魂は、いつしか狂気を呼び込み、破裂する。“沈黙”が守ってきたものの正体に切り込む、罪と罰の慟哭ミステリー。『汚れた手をそこで拭かない』が直木賞候補、『火のないところに煙は』が本屋大賞と山本周五郎賞候補。『許されようとは思いません』続々重版中、芦沢央が渾身の力を込めて書き上げた超傑作がついに文庫化!「この小説そのものが、底の知れない沼のようだ。読み始めたら、逃げられずに沈んでいく恐怖を快楽にかえて、読み耽るしかない」──角田光代(解説より)※この電子書籍は2019年8月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。