妻子の待つ武漢へ、新型肺炎が蔓延し封鎖された中国をゆく男の決死行。中国からの亡命を余儀なくされた作家が放つ渾身のコロナ文学。本書は2通りの読み方ができます。まず、新型コロナ発生源となった中国で何が起きていたかを描くものとして――反骨の亡命文学者が、コロナ禍下の民衆の悲劇と、それを隠蔽する国家の罪を暴く告発の書として。そしてまた、いち早くコロナ禍に正面から挑んだ現代小説として――封鎖された大地を旅する艾丁を通じて、現在の「中国」が、スリリングに、ときに大らかに描かれてゆきます。病毒の街・武漢で、艾丁を待ちうける運命とは……。