何たることだろうか。私は確実に退行しているのだった。(中略)奈緒が童話を読み、女の豊かさの象徴とも言える大きな乳房で私のモノを愛撫するようになってから、自分はさらに退行していった。――本文より音楽プロデューサーの塩原達也はバツイチ独身の五十歳。良き友人となった前妻と、セックスを愉しむ関係の人妻の愛人がいたが、ある日、「母親の行方を探している」と奈緒という女性が突然訪ねてくる。二十九歳の彼女と出会い、急速に惹かれていく塩原。やがて関係を迫る彼に対し、奈緒が望む性愛の形は変わったものだったが、徐々に甘美な毒にとらわれていく――。“禁断の純愛小説”問題作が文庫化!解説 村山由佳※この電子書籍は2017年3月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。