花を生ける、人を生かす。まだ悲しみも喜びも知らぬ少年僧の、四季折々の花に彩られた成長物語。物語の舞台は文政13(1830)年の京都。年若くして活花の名手と評判の高い少年僧・胤舜(いんしゅん)は、ある理由から父母と別れ、大覚寺で修行に励む。「昔を忘れる花を活けてほしい」「亡くなった弟のような花を」「闇の中で花を活けよ」次から次へと出される難題に、胤舜は、少年のまっすぐな心で挑んでいく。繊細な感受性を持つ少年僧が、母を想い、父と対決していくうちに成長をとげていく、美しい物語。解説・澤田瞳子※この電子書籍は2017年7月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。