老俳人・月岡草飛が行くところに怪異あり?それは実際に起こった――そういうことだ。俳人・月岡草飛は妻を亡くして気まま放題。月岡のもとには、謎めいた依頼の数々が持ち込まれる。生きる欲望に貪欲に突き進むうち、いつしか異界に迷いこむ。名手が贈る、ブラック&ナンセンスな奇譚集。それはごく小さな空間で、真っ白な蓬髪を肩まで伸ばした老人が椅子に座り、背を丸め、眉根にしわを寄せて、自分の前の台のうえに置いた大きなフラスコの中をじっと見つめていた。月岡が思わず怯んだのは、その凝視のまなこに狂気の光としか呼びようのないものが炯々と輝いていたからだ。――本文より