「好きです、夫にします」斎藤綾乃十八歳。許嫁と名乗る人からの手紙で高校を中退し、東京から遠く離れた田舎のとある村に移住しました。私は貴方の許嫁です――母を亡くしたばかりの綾乃のもとに届いた一通の手紙。部屋の退去勧告を受け進退窮まっていた綾乃は、迷わず差出人・冬晟の元へ向かう。予想より若く、柔和な若隠居といった風情の冬晟は、村の揉め事を調停する大事な役割を担っていた。許嫁らしい決め事もなく、家事を引き受け慎ましく暮らす綾乃だが、調停を手伝い村人たちと関わることで、結婚の約束には深い理由があると知ることに…。わみず・装画