唐津藩嫡子の身ながら藩から排されつづけた元老中の究極の決断!幕府崩壊の尖風と黒煙の下、小笠原長行に帰国の誘い。またも藩存続の生け贄か!もう藩には左右されぬ──。(第五話『春告げ鳥』)慶応四年三月三日、三度目の老中を辞したばかりの小笠原長行のもとへ国許の唐津から使者が訪れた。時節柄、帰国されては…という藩主からの誘いであった。長行は二歳で藩主の父を亡くし、藩国替えの危機脱却のため、後継者から排された。こたびは、新政府への生け贄として長行を呼び戻す。もうこれ以上、藩存続のためには動かぬ。長行は究極の決断を己に迫った。(第五話)