あらすじあのころ知りあいのだれもがなにかしらのウソをついて暮らしていた――長く潜伏したあとでひょっこり姿をあらわした、良く似た姉妹による巧妙なウソ。郵便受けに届いた1枚の葉書が呼び起こした、弟との30年前の秘密。「語りとは騙りのことである」とうそぶく読書会の主宰者。賢治の童話やフランドル派の絵画に秘められた寓意。そして、記憶を失った青年たちと、自らの物語に生きる老婦人たち――。消えゆく記憶の彼方、不在の人物の輪郭から、おぼろげに浮かび上がる6つの物語。解説・東直子