一九〇三年に生を受けるも生い立ちがまったく異なる二人の男が、関東大震災をきっかけに思いもよらぬ運命へと導かれる。ジェフリー・アーチャー『ケインとアベル』を思わせる傑作大ロマン小説!ひとりは、東北の寒村の生まれの柾木謙吉。もうひとりは、大阪の銀行家の息子で、何不自由なく育った水町祥太郎。 講義録の出版で大成功をした笠尾喜十郎の家で書生をしていた謙吉は、関東大震災当日、喜十郎の娘・華枝を、華枝の腹違いの兄・喜之が手篭めにしようとしている現場に遭遇し、勢いあまって殺してしまう。浅草へ外出していた喜十郎一家は全員亡くなり、震災の混乱に乗じて謙吉は喜之を演じるようになった。謙吉は、喜之が行く予定だったロンドン留学で学力や人脈を培い、帰国後、内務官僚になる。一方、祥太郎は、ひょんなことから、映画監督や地方紙の社長と知り合い、映画制作に関わることに。関東大震災から終戦直後までを背景に二人の男の波乱万丈の人生が、東京・大阪の“二都”から上海や満州国の首都・新京(いまの長春)までもを舞台に展開します。笑いあり涙もあり活劇あり、そして踊りや歌も入った、まさに大衆小説の王道的傑作です。