あらすじ時は江戸。如月庵は知る人ぞ知る小さな宿だが、もてなしは最高。かゆいところに手の届くような気働きのある部屋係がいて、板前の料理に舌鼓を打って風呂に入れば、旅の疲れも浮世の憂さも消えてしまうと噂だ。人のいい部屋係・お蕗はよく庭の花の手入れをしている。だが、花が好きだというのは表向きで、じつは庭に埋めた金を毎日確認しているのだ。実はその金は、お蕗が奉公していた家の金で――