第151回芥川賞受賞作。「春の庭」書下ろし&単行本未収録短篇を加え 待望の文庫化!東京・世田谷の取り壊し間近のアパートに住む太郎は、住人の女と知り合う。彼女は隣に建つ「水色の家」に、異様な関心を示していた。街に積み重なる時間の中で、彼らが見つけたものとは――第151回芥川賞に輝く表題作に、「糸」「見えない」「出かける準備」の三篇を加え、作家の揺るぎない才能を示した小説集。二階のベランダから女が頭を突き出し、なにかを見ている。(「春の庭」)通りの向こうに住む女を、男が殺しに来た。(「糸」)アパート二階、右端の部屋の住人は、眠ることがなによりの楽しみだった。(「見えない」)電車が鉄橋を渡るときの音が、背中から響いてきた。(「出かける準備」)何かが始まる気配。見えなかったものが見えてくる。解説・堀江敏幸