日本一有名な文学賞「芥川賞」。1935(昭和10)年に行われた第1回芥川賞にノミネートされたものの、落選した小説家は次のうち、誰でしょう?a.川端康成 b.芥川龍之介 c.菊池寛 d.太宰治答えは最後に記しますが、この小説家は自分を落とした選考委員を逆恨み、「刺す!」とまで言い放って大事件に発展した前科を持ってしまいました。あるいは最近では「都知事閣下のために(芥川賞を)もらっといてやる」発言で話題になった田中慎弥、史上最年少受賞で日本中を熱狂させた綿矢りさ、金原ひとみの受賞劇も記憶に新しいでしょうか。普段は小説を読まないけれど「芥川賞受賞作が掲載される月刊『文藝春秋』だけは読む」という人も多いのですが、どうして芥川賞は文学の世界にとどまらず、社会的な事件にもなるのか。その秘密は、謎のベールに包まれたままの「選考会」に隠れています。石原慎太郎『太陽の季節』、大江健三郎『飼育』など日本文学の名作から、文壇の大御所たちの大ヒンシュクを買った問題作まで、歴代の受賞作を生んだ現場ではどんな議論がなされたのか。ヒントは選考委員が書き残した1400以上の「選評」にありました。「該当作なし!」連発の開高健、三島由紀夫の美しい選評――、半藤一利が語った「司会者の苦しみ」。全選評を完全読破した記者が、ついに謎を明かします。注目の芥川賞選考会。本書を片手に、選考会という「密室」で起きる事件に要注目です。(答えはd。事件の詳細は本書で)【目次】第1章 太宰治が激高した選評第2章 戦争と選評第3章 純粋文学か、社会派か第4章 女性作家たちの時代第5章 該当作なし!第6章 顰蹙者と芥川賞