1.「いいものがあるよ」霊感の強いAさんの体験談。店を開業するにあたり、全国に散らばっている仲間たちと都内行きつけの居酒屋で飲んだ帰り、終電間際の某駅でのできごと。酔っぱらった友人の一人が「電車が止まる」理由と「止まる駅は決まっていると」話し出す。ホームの端でふざけあっている内、Aさんは何者かに強く引っ張られ膝をついて四つん這いに。その視線の先にいたものは……。2.「墓荒らし」御存命であれば90代のお婆さんがまだ幼少の頃の話。彼女が生まれ育った田舎は、当時まだ土葬であった。まだ小学校にも上がらない小さなころ、親戚の叔母が若くして亡くなった。通夜の晩、布団に入った彼女は、隣室にて一夜明かして起きている大人たちが、墓守を誰がやるかという相談を真剣にしている声を聞く。新仏の墓を暴く妖が出ると困ると難しい顔で話しあっているのだ。その晩は何事もなく、葬儀まで滞りなく終わったのだが。初七日を迎えるころそれは彼女の部屋にやってきた。3.「またくる」50年輩のサトミさんは人生で二度、お風呂場でそれに出くわしている。もともと気配や悪寒に敏感だった彼女が、小さい頃姉たちと留守番をしていた秋の日の夕暮れ、長姉の背中に張り付くように見えた黒い影に目を奪われる。やがて入浴しようと風呂場に向かったのだがいざ入ってみると、狭い風呂場に姉の姿はない、途端に体が熱く重くなり朦朧とした視界に蠢く者は長髪を振り乱し、異様に手足の長い人であって人でない何かだった。やがて、「また来る」という謎の文言を残して姿を消してしまったのだが、サトミさんは数十年後再びソレと出くわすことになる。4.「訪ねてくる女」体験者がまだ新社会人だった二十数年前、就職先も決まり彼女も出来、都内某所の新しいマンションの角部屋に引っ越して間もない頃、出勤するのに部屋を出た朝7時にふと気づくと自分好みの綺麗な女性が廊下の奥に立っているのに気が付いた。それから毎朝のようにすれ違い、ある日とうとう男女の一線を越えてしまう。逢瀬を重ねて一カ月、本命の彼女からかかってきた一本の電話から事の異変を知らされることになるのだが。