上野黒門町の紅葉屋。茄子紺の作務衣の千吉、新装の見世で花板に!女将は元味比べの女料理人。品川の店を潰され今の地に。跡取りの丈吉はまだ十歳で修業中、行く行くは花板に。田楽と蒲焼きの店では……。武士を捨て料理人となった磯貝徳右衛門は、神田横山町の旅籠付き小料理のどか屋の主。時吉と名を替え、おちよとの間にできた息子千吉は十五歳になった。祖父長吉の許で修業をしていた千吉に、縁あって“花板”の仕事が舞いこんだ。品川宿で田楽と蒲焼きの店を地攻めにあって潰された紅葉屋が、上野黒門町で再興できたのだ。跡取りが十歳のため、つなぎの花板の役が来たのだ。* 本書に登場する小料理 *・茸の炊き込みご飯 ・南瓜の印籠煮・蛸大根 ・しめ鯖の辛子和え ・白魚と三つ葉のかき揚げ ・鮎の背越し・鯛飯 ・銭鰹 ・山独活の三種漬け・寒鰤の串焼き ・黒豆の長老喜添え