教育基本法「改正」から10年を経て、日本の教育は一層「人材」養成に重きを置き、一定の子どもたちが「問題のある子ども」、「困難を抱えている子ども」へと分類されていく。かれらは「支援」の対象となり、排除された上で現状の価値尺度への適応を求められる。これは国際的な動向でもある。「できる―できない」の軸で人びとを判断しようとする価値観は、それに基づく格差を正当化するだけでなく、むしろ平等を実現していると見られている。戦後最大の殺人事件と言われた相模原障害者施設殺傷事件と、始業式の日に子どもの自死が最多となる「9月1日問題」。2つの深刻な事態に共通する問題こそ「能力主義」なのである。本書では、人びとが能力主義を疑わずに受け入れるメカニズムを解明し、その呪縛から解かれたあとの社会を想起する。