京で暮らす5歳の貴和は黒笠の法師に追いかけられていたところを、神社で遭遇した少年に助けられる。そんな恐ろしい出来事のあった翌日、今度は貴和の母が姿を消してしまう――。それから数年後、12歳になった貴和は町の薬種問屋「白香堂」に奉公することになり、そこでかつて助けてくれた少年・燕児と邂逅する。燕児は縁見屋という口入屋の息子で、医者を目指して白香堂に勉強にきていたのだ。ところが燕児は言葉をいっさい発さず、それは母・お輪の命を守るために交した、ある法師との約束によるものだと聞く。いっぽう、町では疫病が流行り、貴和の友人も患っていた。ある祈祷師による祈祷が効くと評判になり、貴和が会いに行くと、そこには黒笠の法師がいて――。縁を背負った数奇な者たちの運命が、動き出す。