吸血鬼は城から出ない。決して。……たぶん。 伝説の吸血鬼、神にさえ刃向かうという真なるバケモノ――。そう呼ばれたのも昔の話。現在の彼は、王国のかたすみ、幽霊屋敷と笑われる古城でヒキコモリ生活を送る、さえないおっさんだった。 平和で怠惰な毎日――しかし、そんな平穏はある日唐突に崩れ去る。「おじさん、朝ですよー!」「朝日が痛い!」 教会から来た聖女は、おじさんを吸血鬼と信じず社会復帰を笑顔で迫る! 伝説のドラゴンは犬と勘違いされ、コウモリの眷属は孫娘扱い、そして吸血鬼はヒキコモリのおじさんに。これは『吸血鬼』がお伽噺にしか出てこなくなった平和な時代。善意100%の聖女と吸血鬼との、平和なやりとりの記録である。