汐見夏衛氏が贈る書き下ろし新作。新境地。そして最高潮――。どうでもいい嘘ばかりついて、へらへら笑う『かまってちゃん』の綾瀬水月。誰とも喋らず親切も拒絶して、透明人間扱いされている〈変人〉、羽澄想。ふたりは、誰にも知られていない悩みがあった。居場所がなくて毎日が息苦しくて――"死"に憧れていた。そんなふたりが、あるきっかけで一緒に過ごすようになる。互いに聞かれたくないことは触れず、そっと寄り添うように過ごすおだやかな日々。そこに居心地の良さを感じる羽澄と綾瀬。しかし、現実は残酷で……。「ふたりなら、きっと、怖くない」潤んだ瞳が海を見ている。「せえの……」息を合わせて、手を繋いだまま、ふたり同時に地面を蹴った。心を鈍らせ、奇跡を信じていた羽澄と綾瀬。彼らが絶望の中で見つけた答えとは――?