――どうでもええ。俺には椿様がおればええ。人魚の宝が眠るとされる『夜海島』。その島の網元の娘・椿は、得体の知れない妾の子として、島民の羨望と嘲笑とを同時に集めていた。だが彼女には、逞しくも美しい“狂犬”が常に寄り添っている。8年前島に流れ着き、椿によって助けられた記憶喪失の青年・潮だ。閉鎖的な島で、椿は彼にだけ心を開き、彼も盲目的に椿を崇拝していた。互いに恋情を抱きつつ、主従の関係を貫いてきた二人。しかしある出来事をきっかけに、官能の深みにはまってゆき――。寡黙な狂犬と妖艶な網元の娘の、明治純愛怪奇譚!【目次】queenあとがき